仕事観第三話 噛み合わない会議の正体は、能力差ではなく、思考の段差──7段の階段を、登り降りする

話が噛み合わない理由は、立場や役職ではなく、思考の階段のどこに立っているかのズレです。反応、気づき、論理、批判、メタ認知、構造、戦略。上に住むのが偉いのではなく、状況に応じて登り降りできる人が強い。
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
「話が噛み合わない」を、多くの人は「言い方の問題」で片付けます。私は、これは違うと思っています。
噛み合わない本当の理由は、言い方でも立場でもなく、思考の階段のどこに立っているかのズレである。
先に大事な区別をしておきます。この「階段」は、職制や役職の話ではありません。社長は上、平社員は下、ではない。頭のなかで、目の前の情報にどう向き合っているか、その処理の段の話です。
思考の7段の階段
これを、明快に整理していたのが、YouTubeで見かけた深淵回廊さんの解説動画「本当に頭が良い人は何を考えているのか?」でした。私が現場で感じてきたことが、はっきりと言語化されていた。要約すると、こうです。
- 1段目:「反応的思考」——考える前に、口が動く。過去の習慣と感情の自動運転
- 2段目:「気づき」——現象には気づくが、なぜかは掘らない
- 3段目:「論理」——原因から結論まで筋道が通る。社会人の大半の仕事はここで回る
- 4段目:「批判」——「その前提は正しいか」を疑う。土俵そのものを検品する
- 5段目:「メタ認知」——疑う先が、初めて自分に向く。自分のバイアスと目が合う
- 6段目:「構造」——事象を点ではなく、システムとして見る
- 7段目:「戦略」——時間軸を持ち、下の6段を状況に応じて使い分ける
大事なのは、7段目が偉い、ではないところです。**7段目とは、下の6段を「道具」として使い分けられる段のこと**。火災報知器が鳴った瞬間に6段目を起動する人は死にます。1段目で走るのが正解。コンビニのレジで6段目を回す人は、後ろの列を渋滞させるだけ。上に住むことではなく、状況に応じて登り降りできることが、7段目の本当の定義です。
3段目と6段目が、かみ合わない理由
よく見る一場面を、動画の例を借りて置きます。議題は「若手の退職が続いている」。
Aさん(3段目):「3年目で負荷が上がるのに給料が変わらない。昇級を前倒しにしましょう」 Bさん(6段目):「うちは、若手が辞めたくなる仕組みで回っています。若手の退職は原因ではなく、結果です」
Aさんの論理は通っている。Bさんの構造も通っている。ただ、二人の見ている画面のサイズが違います。Aさんから見ると、Bさんは「話が大きすぎる」。Bさんから見ると、Aさんは「対症療法にしかならない」。両者とも、腹の底で「相手が話をずらしている」と感じている。
正しさ同士は、同じ段の上でしか握手できない。
これが、噛み合わない会議の正体です。能力差ではなく、段差です。
上ほど正確、上ほど遅い
段には、性質があります。上に行くほど正確になり、上に行くほど遅く、燃費が悪くなる。だから、正しい段は、状況で違います。
- 火災報知器が鳴った瞬間:1段目「まず走る」が正解
- 商談の即興:2〜3段目
- 中期の事業判断:4〜6段目
- 数年先の戦略判断:7段目
一つの段しか持たない人は、必ずどこかで詰みます。
実力は、平常時ではなく、感情が動いた瞬間で測る
ここが、繰り返し噛みしめている部分です。平常時の段は、自己申告できます。「自分は4段目くらいかな」と、多くの人が見積もれる。でも、測るべきはそこではありません。
怒った瞬間、痛いところを突かれた瞬間、渋滞に巻き込まれた瞬間、あなたは何段目まで落ちるか。
普段5段目にいる人でも、本気で反論された瞬間、一気に1段目まで落ちて「誰のせいだ」と口走る、ということはあります。人生の重要な判断は、平常時ではなく、感情が動いた瞬間に降ってくることが多い。だから、実力は最高到達点ではなく、ストレス時の最低点で決まる。普段6段目の人より、怒っても3段目に踏みとどまる人の方が、実務では強い。
段差を扱うのは、上の段にいる側の責任
段の違う二人が話しているとき、噛み合わせの責任は、より上の段にいる側にあります。相手が階段を上がってきてくれるのを、待ってはいけない。上の段にいる側が、階段を降りて、相手の段で言葉を組み直す。降りた上で、「今の話を一段上に上げて見るとこうなる」と一緒に上がる。
これを省略すると、上の側の発言は「話が大きい」で片付けられ、下の側は「抽象論ばかり」と感じる。悪いのはどちらでもなくて、上の側が階段の登り降りを省略しただけです。
今日のまとめ
- 噛み合わない会議の正体は、能力差ではなく、思考の段差
- 7段:反応/気づき/論理/批判/メタ認知/構造/戦略
- 上に住むのが偉いのではなく、状況に応じて登り降りできる人が強い
- 実力は、感情が動いた瞬間に何段目まで落ちるかで決まる
- 段差を扱う責任は、上の段にいる側
次回は、この登り降りをしながら組織を運営するときに必ずぶつかる話です。
「多様性を認めるとは、静かに我慢し続けること」。







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