仕事観第五話 深堀りとは、具体と抽象を行き来しながら、抽象の側で構造を見抜くこと──コンビニの棚から始める

深堀りは、細部の積み上げではありません。具体と抽象を行き来して解像度を高め、抽象の側で構造を見抜くまでを一続きにやる動作です。多くの人がピンと来ないので、コンビニの棚を例に、順にたどります。
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
会議で「もっと深堀りしてください」と言われて、多くの人がまずやるのは、細部を積み上げることです。数字を細かく分ける、事例を集める、ページを増やす。丁寧なのに、話は散らかっていく。これは、具体の側で止まっているパターンです。逆に、「要するにこういう構造ですね」と、いきなり抽象で答えて、「明日どうしますか」で詰まるパターンもあります。これは、抽象の側で止まっているパターンです。
深堀りとは、この両方を回避する一続きの動きです。
具体と抽象を行き来しながら解像度を高め、抽象の側で構造を見抜くまでを、切れ目なくやること。
コンビニの棚で、順にたどる
抽象論だと伝わりにくいので、日常の景色で説明します。
例題:「最近、コンビニのパンの棚が、以前より狭くなった気がする」
Step 1:具体を、実際に観察する。
「気がする」で止めずに、店に入って数える。A店は棚が30cm短い。B店は同じ長さだが中央列が総菜に変わっている。C店は逆に、以前より長くなっている。
Step 2:抽象に、一段上げる。
店舗によって、方向が違う。ということは、「パンの棚が狭くなった」ではなく、「店舗ごとに逆方向の伸縮が起きている」に見立てが変わる。
Step 3:もう一度、具体に降りる。
店舗を分けているものは何か。A店は住宅街、B店はオフィス街、C店は地方駅前。立地と客層をもう一段細かく見る。
Step 4:もう一度、抽象に上げる。
住宅街のA店は昼の温かい食事需要が強く、パンの棚を減らす。オフィス街のB店は昼にサラダ・総菜へシフト。地方駅前のC店は夜の軽食需要でパンを拡大。**立地×時間帯×客層**で、伸縮が説明できる形になる。
Step 5:抽象の側で、構造を見抜く。
一段上げると、こう見える。コンビニは、単一の商品構成のチェーン店から、**立地ごとに独自の品揃えを持つミニ・スーパーマーケット**へ、業態が静かに変わりつつある。
Step 6:構造を、具体で検証する。
他のカテゴリ(飲料、冷凍食品)でも同じ動きが起きているか、他のチェーンでも同じ動きが確認できるか。取れれば、構造の確度が上がります。
解像度が、両側で同時に上がっていく
この動きの本体は、具体と抽象の両側の解像度が、往復のたびに一段ずつ上がっていくことです。
- 具体:「棚が狭くなった気がする」 → 「30cm短い、中央列が総菜化、C店は拡大」
- 抽象:「棚が狭くなった」 → 「店舗ごとに逆方向」 → 「立地×時間帯×客層」 → 「業態が立地別品揃えへシフト」
両側で同時に上がるから、抽象は雑な一般論で終わらないし、具体は網羅性のない断片で終わらない。片側の解像度だけを上げても、深堀りにはなりません。
途中で止まると、深堀りではなくなる
具体で止まれば、感想で終わる。抽象で止まれば、それっぽい説明で終わる。構造を見抜いても、具体で検証しなければ、独りよがりの仮説で終わる。
一続きで、切れ目なく、最後までやり切る。これが、深堀りの実装です。
今日のまとめ
- 深堀りは、具体と抽象を行き来しながら解像度を高め、抽象の側で構造を見抜くまでを一続きにやること
- 両側の解像度が、往復のたびに一段ずつ上がっていく
- 途中で止まれば、感想/それっぽい説明/独りよがりの仮説で終わる
次回、シリーズ最終回です。
「構造を見抜くとは、フレームワークで捉える作業ではない」。
車のバック入庫と、SFI開発の逆説の話をします。







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