SFI正式版への道#6(最終回) 不満ゼロは、慣れのサイン

有償PoCで、UI、UXへの指摘はほとんど出ませんでした。でもそれは、人が不便な操作を「当たり前」として受け入れてしまうから。だから、声を待たずに先回りしました。そして最後に、CHIPのことも少しだけ。本記事は全6回の連載「SFI正式版への道」の第6回(最終回)となります。
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
連載の最終回は、UI、UXの話です。
指摘が出ないことと、不満がないことは、違う
PoCでは、機能の要望はたくさんいただきました。一方で、UI、UXへの指摘は、ほとんどありませんでした。
これを「合格点だった」と受け取るのは、たぶん間違いです。
現場の人は、道具の不便さに、驚くほど我慢強い。 最初は使いにくいと思っても、何度か使ううちに手順を体が覚え、「そういうものだ」になる。
線を引くたびに、小さな端子を狙ってドラッグする。
数百列の中から、目当ての列名をスクロールして探す。
1回は数秒の手間なので、誰も文句を言いません。でも、それが毎日何十回も積み重なり、本人も気づかないうちに「なんとなく面倒」になって、Excelに戻る理由になります。
だから、UI、UXだけは声を待っていてはいけない。作る側が先回りして潰しました。
| 改善 | これまでの「当たり前」 | 正式版 |
|---|---|---|
| ブロックのテンプレート | 毎回ゼロからブロックを 置いて、つなぐ | よく使う構成を選ぶだけで、配置と接続まで完了 |
| 接続線の自動化 | 小さな端子を狙って、 線をドラッグ | ブロックを近づけるだけで、自動でつながる |
| ダブルクリックで最大化 | 狭い枠の中で、スクロールしながら設定 | ダブルクリックで設定画面を最大化 |
| 検索の部分一致 | 列名を正確に打つか、 スクロールで探す | 「温度」と打てば、温度を含む列がそろう(正規表現にも対応) |
| ブロックの色分け | どれが何のブロックか、 読まないと分からない | 色の並びで、流れが遠目にも分かる |
テンプレート:毎回ゼロから組まない
PoCで実際に組まれたフローを並べてみると、パターンはそれほど多くありませんでした。
- 入力データ登録 → クレンジング → AI自動選定
- 入力データ登録 → 波形・ロット特徴抽出 → クレンジング → AI自動選定
- 入力データ登録 → 抽出・行連結 → 波形・ロット特徴抽出 → クレンジング → 学習項目選択 → AI自動選定
だから、よく使う構成をテンプレートにしました。「何をつなげばいいか」で悩む時間を、ゼロにするのが狙いです。
接続線・最大化・検索・色分け
接続線の自動化は、ExcelやPowerPointで図形がガイド線に吸い付く、あの感覚です。開発記#10で書いた「現場が毎日使うソフトの操作感を尊重する」を、ここでも守りました。
ダブルクリックでの最大化は、クレンジングの8機能や波形特徴抽出の37特徴量のように、設定項目の多いブロックのためです。集中したいときは大きく、全体を見たいときは戻す。
部分一致の検索は、「炉内温度_ゾーン1」のような長い列名が数百並ぶ現場データのためです。列名を全部覚えていなくても探せます。
色分けは、遠目に色の並びを見るだけで「ここで前処理、ここでAI」と流れがつかめるようにしました。
どれも営業資料には載らない改善です。でも、「迷わない」「手数が少ない」は、こういうところでしか作れません。
CHIPが、やってきました

図:CHIP登場
正式版から、CHIPが登場します。指示棒を持ったロボットの猫です。
正直に書きます。CHIPは、機能にはまったく関係ありません。 解析の精度は1ミリも上がりません。
それでも入れたのは、前回の称号・トロフィーと同じ理由です。無機質な画面に、ちょっとだけ愛嬌がある。それだけで、ツールを開くときの気持ちがほんの少し軽くなる。そのほんの少しが、毎日開いてもらえるかどうかを分けることもあると思っています。
連載全体のまとめ
| 回 | テーマ | ひとことで |
|---|---|---|
| 第1回 | お詫びと予告 | PoCの要望を、標準機能として組み込んでいた |
| 第2回 | 機械学習の前の分析 | AIを回す前に、まず「見る」 |
| 第3回 | 新規分析列とビニング | 回帰で見えないなら、区切ってみる |
| 第4回 | 多目的最適化 | 一番大事なのは、説明変数の現実性 |
| 第5回 | 称号・トロフィー | 「解いた問い」で昇格する |
| 第6回 | UI、UX | 不満の声が出る前に、先回りする |
第2回から第5回は、現場でデータを流し込んだ方にしか気づけないことでした。第6回は、現場の方が気づいても口にしないことです。どちらも、机の上では見えません。
PoCに参加いただいたお客様に、あらためて感謝します。
遅れた時間は、取り戻せません。
でも、その時間で足したものは、どの工場でも必ず効くと信じています。
受注開始は10月15日頃、配布開始は11月1日を予定しています(前後する可能性があります)。日程が確定しましたら、あらためてお知らせします。
「言葉ではなく、数字で示す」。正式版がお客様の現場で動き始めたら、またその結果をブログで報告します。
それでは、また次回。






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