SFI正式版への道#2 AIの前に、まず「見たい」

機械学習まで回す機会は、実はそれほど多くない。一方で、日々の「ちょっとデータを確認したい」に、現場はずっと困っていた。SFI正式版で足した「機械学習の前の分析機能」を書きます。本記事は全6回の連載「SFI正式版への道」の第2回となります。
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
今日は、機械学習の「手前」 の話です。
毎日AIを回す工場は、ほとんどない
AIでモデルを作るのは、新製品の立ち上げや品質問題の発生といった節目のときです。せいぜい数か月に1回でしょう。
一方で、毎日のように発生している仕事があります。
「昨日の夜勤から、温度の挙動がおかしい気がする」
「この品質スコア、どの項目と連動してるんだっけ」
こういう 「ちょっとデータを見たい」 です。そして、その多くはいまだにExcelで行われています。
AIの手前で毎日困っているのに、そこに道具がない。 ここは見過ごせない穴でした。正式版で足したのは、次の4つです。
| 追加機能 | 解決すること |
|---|---|
| 相関クラスタの自動抽出 | ヒートマップから、 連動する項目群を自動で拾う |
| 目的変数ごとの相関ランキングと散布図 | 「どれから確かめるか」の順番を出す |
| 全変数トレンドの一括作成 | データ全体のふるまいを、まず眺める |
| グラフのリッチ化 | 描いたグラフを、そのまま報告に使う |
① 相関行列は、人の目では「読めない」
相関行列ヒートマップは、データ解析の定番です。でも、項目が増えると、組み合わせは一気に膨らみます。

図:組み合わせ数
100項目で4,950通り。ここから「どの項目群が連動しているか」を人の目で拾うのは、ほぼ無理です。下記、見れませんよね?

そこで、相関の強いかたまりを自動でグループ化し、一覧にする機能を追加しました。

図:相関クラスタ一覧
たとえば上の例では、「積算電力量」と「累積稼動時間」の相関が0.998。ほぼ同じものを、2本のセンサで見ているということです。
連動する項目群から代表を1本選べば、見るべき本数が一気に減ります。後の機械学習で、似た項目が多すぎて結果が不安定になる問題も、手前で潰せます。
1本ずつ見るな、束で見よ。
② 目的変数が決まっているなら、順位をつける
現場のエンジニアさんの頭には、たいてい「見たい目的変数」が最初からあります。知りたいのは、「これに効いていそうな項目は、どれか」 です。
SFIでは、目的変数を選ぶと、
- 説明変数を、相関係数の順に自動でランキング
- 上位の項目について、散布図を一括表示(回帰線と相関係数つき)
までを自動でやります。
ただし、相関は答えではありません。一部の外れ点だけで相関が高く見えることもあるし、点のかたまりが2つに分かれていれば、装置や品種の混在を疑うサインです。だから、数字だけでなく散布図で形を確かめる。「次に確かめる順番」を最短で出す道具です。


③ 全変数のトレンドを、一度に並べる
ベテランのエンジニアさんは、いきなり相関を計算しません。まず、全項目の時系列をざーっと眺めて、感覚をつかむ。段差がある、周期的に揺れている、同じタイミングで動いている──。
この工程を飛ばすと、データの癖に気づかないまま、もっともらしい結論を出してしまう。これが一番怖い。
そこで、全変数のトレンドを一括で作る機能を入れました。500項目×数千サンプルでも、数秒で描き切ります。
④ グラフは「描ける」だけでは足りない
5種類のグラフの設定を、大幅に増やしました。

図:グラフ4種のリッチ化
| グラフ | 何を見るか | 正式版で加えた主な設定 |
|---|---|---|
| トレンドグラフ | 時間軸での変化 | 平均線と±1σ〜±3σの帯、移動平均と移動標準偏差の帯、層別の色分け |
| ヒストグラム | 分布の形 | 規格値、ビンの自動設定、±1σ〜±3σの統計線 |
| 散布図 | 2項目の関係 | 規格値、層別(シフト別など)の色分け、回帰曲線と決定係数 |
| 箱ひげ図 | 層別のばらつき | 装置別などの比較、観測点の重ね描き、規格値 |
| 棒グラフ | カテゴリ別の集計 | 装置ID別などの集計値の並列表示 |
| 全グラフ共通 | ― | 凡例・グリッド・注釈、基本統計量の自動表示 |
なぜここまで作り込むのか。現場のグラフは、報告に使われるからです。
規格値の線が引けない、層別の色分けができない。そうなると結局、Excelで作り直すことになります。それでは、道具として半分しか役に立っていません。
今日のまとめ
- 機械学習まで回す機会は少ない。現場が毎日困っているのは、その手前の「ちょっと見たい」
- 相関クラスタで、読み切れないヒートマップから連動する項目群を一覧化
- 相関ランキングと散布図で、「次に確かめる順番」を最短で出す
- 全変数トレンドで、全体のふるまいを見通す
- グラフのリッチ化で、そのまま報告に使える
毎日使われる道具になれるかどうかは、こういう地味なところで決まります。
次回は、新規分析列とビニングの話です。回帰では精度が出なかったのに、区切った途端に傾向が見えた──PoCで何度も出てきた例を書きます。
それでは、また次回。






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