SFIの謎#1 「なんで今まで無かった」の正体

SFIをお見せしたお客様が、よく漏らす一言があります。「なんで今まで無かったんだろう」。この問いは、私自身がずっと胸の中で転がしてきたものでもあります。全8回で、この不思議を一緒にほどいていきます。本記事は全8回の連載「SFIの謎」の第1回となります。
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
新しい連載を始めます。テーマは一つです。
SFI、なんで今まで無かったんだろう。
先にお断りしておくと、この論点は、MIとPIの話、生成AIとの違い、SFI開発記、そして連載「SFI正式版への道」で、断片的に書いてきました。「前に読んだ」と感じる箇所があると思います。今回は、それらを一本の筋に通してみます。
驚かれるのではなく、腑に落ちた顔をされる
SFIをお見せすると、「すごい」と驚かれることは、あまりありません。
それより、「なんで今まで無かったんだろう」 と言われることの方が、圧倒的に多い。長いあいだ胸の中に置いてあったものが、目の前で形を得た、という顔です。
有償PoCでも、同じことを感じました。いただいた要望は、どれも具体的でした。
「機械学習の前に、まずデータを見たい」
「回帰で出ないなら、区切って見たい」
「目的は1つじゃない。でも、試せない条件はいらない」
お客様は、欲しい道具の形を、既に頭の中に持っていたんです。SFIはゼロからの発明ではなく、答え合わせに近い。
だとすると、疑問があらためて立ち上がってきます。
数字で見ても、「待たれていた」は裏づけられる
「待たれていた」は、私の感覚だけの話ではありません。国の統計にも、はっきり表れています。

図:取得活用効果
2026年版ものづくり白書によると、製造業でデータを取得している事業者は66.0%。ところが、 活用できているのは51.4%、効果が得られたのは43.9% まで落ちます。出典
取得と効果の差は、22.1ポイント。データを取ったのに、効いていない工場が、5社に1社以上あるということです。SFI開発記#01で書いた「データの墓場」は、いまも統計の上に残っています。
さらに、データ活用が一番進んでいない項目として白書が挙げているのが、「ベテランなどのノウハウ見える化」です。その理由の1位は、「ベテランなどの知識や経験などの形式知化が難しい」(68.6%)。次いで「方法やツールが分からない、活用できていない」(28.6%)、「時間や経営資源が不足している」(28.1%)が続きます。
ここで、少し立ち止まって考えたいことがあります。
| 白書が示す課題 | 裏返すと |
|---|---|
| データは取れている(66.0%) | 道具の入口(センサ、PLC、収集)は、もう揃っている |
| でも効果まで届かない(43.9%) | 「取る」と「効かせる」の間の道具が欠けている |
| ノウハウの形式知化が難しい(68.6%) | ベテランの判断を、数字の手順に落とす仕組みがない |
| 方法やツールが分からない(28.6%) | 現場の人が使える形の道具が、届いていない |
つまり、空白は 「データを取る」側ではなく、「取ったデータを、現場の人が効かせる」側にあります。センサやPLCを30年売ってきた立場からすると、これは実感とも合います。入口のハードは、業界がしっかり供給してきた。出口の道具が、供給されてこなかった。
SFIが答え合わせのように受け取られるのは、この欠けた区間に、ちょうど嵌まる形をしているからだと思っています。
この連載の、二つの問い
| 問い | 中身 |
|---|---|
| 一つ目 | 答えが既にあったなら、なぜ今まで、誰も形にしなかったのか |
| 二つ目 | そして、なぜ、これからも生まれにくいのか |
「今まで無かった」だけなら、いつか誰かが埋める、で終わる話です。でも、私の感触では、これは時間差では埋まらない気がしています。
二つの問いは、実は繋がっています。過去に空白だった理由と、未来にも空白であり続ける理由は、同じ構造の表と裏。そう考えています。
全8回の構成
| 回 | テーマ | 層 |
|---|---|---|
| 第2回 | 機械学習と品質工学は、なぜ交わらないのか | 技術の歴史 |
| 第3回 | 生成AIブームの中で、なぜ決定論を選ぶのか | 市場の外形 |
| 第4回 | 業界はみんな、同じ方を向いていないか | 業界の潮流 |
| 第5回 | なぜ、この値段(¥49,000)が出ないのか | 価格と参入障壁 |
| 第6回 | 代理店・受託・VC──お客さんはどっちを向いているのか | 事業モデル |
| 第7回 | この座組、どこで見つけたの | 体制 |
| 第8回 | この空白は、しばらく埋まらないのか | これから |
一つひとつは独立して読めます。通しで読むと、二つの問いの答えが、いくつかの層として見えてくるはずです。
書く動機は、個人的な不思議の解消
この連載は、営業でも宣伝でもありません。
- なぜ、こんなに待たれていた道具が、今まで無かったのか
- なぜ、これからもすぐには出てこない気がするのか
- なぜ、Vertysのような小さな会社に、居場所が空いていたのか
答えをまとめておくと、この先の判断が明快になる。自分のために書く、が動機の半分です。もう半分は、同じ問いを持つ方の、思考の材料になればという控えめな期待です。
次回は、機械学習と品質工学の話です。この二つがなぜこんなに離れた場所で育ってきたのか。ここから、ほどいていきます。
それでは、また次回。

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