エンジニアの言葉を翻訳する Diary#12
みなさん、こんにちは。Vertysの山本です。
操作性の話が続いていますが、今回はその中でも特に力を入れたポイント。
開発エンジニアが画面に書いた言葉を、
現場の人が読める言葉に「翻訳」する作業です。
暗号のような画面
データ分析ツールの画面を開くと、こんな言葉が並んでいます。
Accuracy、Precision、Recall、F1、AUC、LIME……
データサイエンスの世界では常識の用語。
でも、製造現場のエンジニアにとっては、暗号そのものです。
「Precisionが0.85でした」と言われて、
「それ、良いの? 悪いの?」 がわからない。
これでは使えません。
「日本語にする」だけでは足りない
私たちがやったのは、単なる英語→日本語の翻訳ではありません。
「何を意味しているか」が、読んだ瞬間にわかる言い換えです。
いくつか例をお見せします。
| もとの表記 | → こう変えた |
|---|---|
| Accuracy | 全体の当たりやすさ |
| Precision | 当たり判定の確かさ |
| Recall | 見逃しの少なさ |
| F1 Score | バランスのよさ |
さらに、分析結果の解釈に関わる用語も変えました。
| もとの表記 | → こう変えた |
|---|---|
| LIME(局所説明) | この予測の理由 |
| Feature(特徴量) | 判断材料 |
| Contribution | 予測への影響 |
| positive / negative | 予測を後押し / 予測を弱める |
「LIMEを実行」ボタンは、「理由を表示」ボタンに。
これだけで、押す心理的ハードルがぐっと下がります。
数字の横に「自動コメント」をつける
数値だけ見せても、良いのか悪いのか判断できない人は多い。
そこで、結果の横に自動で評価コメントを表示するようにしました。
正解率 0.8〜0.9 →「全体としてよく判定できています」
見逃しの少なさ 0.6〜0.7 →「まだ見逃しがややあります」
見分ける力 0.5前後 →「ほぼ見分けられていません」
数字を眺めて悩まなくても、
コメントを読めば 「あ、まだダメだな」「おっ、かなりいい!」 と直感でわかる。
エラーメッセージも翻訳する
意外と見落とされがちなのが、エラーメッセージです。
❌ LIME computation failed: unsupported operand type(s) for -: 'str' and 'str'
……これを見せられたら、誰でもパニックになります。
⭕ 「説明を表示できませんでした。データ形式や設定をご確認ください。
これだけで、ユーザーの不安はまったく違います。
「プロモード」と「シンプルモード」
この「翻訳」の発想をさらに押し進めたのが、
「プロモード」と「シンプルモード」 という仕組みです。
WESEEKとの開発のやり取りの中で生まれました。
考え方はシンプル。
裏で動く計算は、まったく同じ。
違うのは、入力の方法だけ。
たとえば、「どの項目を分析に使うか」を絞り込む設定。
| モード | 操作方法 |
|---|---|
| シンプルモード | 「ゆるい / 標準 / 厳しい」 から選ぶだけ |
| プロモード | 具体的な数値を自分で入力する |
シンプルモードで「標準」を選ぶと、
裏では「プロモードで言うとこの数値」に自動変換されます。
やっていることは同じ。見え方だけが違う。
製造現場のエンジニアはシンプルモードで十分。
統計の知識がある人はプロモードに切り替えればいい。
「難しいことを、難しいまま見せない」 ための工夫です。
翻訳の基準
すべての翻訳に共通する判断基準は、ひとつだけ。
「機械学習やAIに詳しくない人が読んで、意味がわかるか?」
製造現場のエンジニアは、PCを使いこなしています。
Excelもネットも普通に使う。
知らないのは、機械学習の専門用語だけです。
だから、そこだけを翻訳する。
地味な作業です。
画面のラベルをひとつずつ変えて、コメント文を考えて、
エラーメッセージを書き直して。
でも、ここにこそ操作性の魂が宿ると信じています。
専門用語を並べて「あとは勉強してください」は、
ツールの傲慢です。
わからない人に合わせるのが、ツールの仕事。
次回は、ここまで語ってきた理想の全部をひとつに詰め込んだ、
SFIの話をしたいと思います。
お楽しみに。
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